2021 年 37 巻 3 号 p. 229-232
脳卒中患者のトイレ動作はADLの中で中難度の項目であり,運動麻痺や高次脳機能障害を呈した発症早期の患者では多くが介助を必要とし,その重症度が高いほど,介助量は増加する傾向にある.さらに,脳卒中発症3カ月以内で過活動膀胱の頻度は約36%であり,尿意や頻尿による心理的負荷が歩行能力の改善を妨げる可能性が報告されている.今回,脳出血を発症し,重度運動麻痺と高次脳機能障害を生じた若年男性患者に対し,歩行能力の改善目的に作製した長下肢装具を使用することで,立位での排尿動作が獲得でき,理学療法・作業療法中の頻尿への介助が軽減され,十分な歩行練習が可能となった症例を経験したので報告する.