2021 年 37 巻 3 号 p. 225-228
不登校の状態から,先天性上肢欠損症による挫折感を抱くようになった思春期の男児に対して,筋電義手の処方,訓練した結果,不登校が改善されていった.筋電義手の訓練を受けながら,少しずつ学校へ通学するようになり,筋電義手の長期貸し出し後は,学校で使用するようになった.学校職員とも情報交換し,筋電義手の使用場面が増えていった.自宅でも筋電義手を利用し,その後は特例補装具として認められた.先天性上肢欠損児は,成長に伴い欠損による挫折感などを抱くことがある.筋電義手は両手動作や外観といった身体面だけでなく,精神面にも働きかけた可能性がある.学校での定着には,筋電義手の訓練を担う医療機関と学校の教員等との情報交換が有用であり,今後は学校教育関係者への啓発が必要であると考える.