抄録
手の装具療法に応用できるバイオメカニクスと考慮すべき事柄について述べる. 手の装具は生活に支障がないよう小型化, 軽量化, 精密さ, 美しさなどが要求され, その条件に対応できる材料が必要である. 関節拘縮を予防したり拘縮を除去する装具では靱帯組織や瘢痕組織を引き伸ばす機能が必要である. 動的副子の牽引により靱帯や瘢痕のコラーゲン線維は引っ張られて, 波形配列から直線配列に変わる. また, コラーゲンは温熱により架橋が緩み, 引っ張り力により延長しやすくなる. 牽引方向を決定するには, 指関節の解剖学的特徴について熟知しなければならない. MP関節を構築する中手骨骨頭の形状や側副靱帯の走行, PIP関節の屈曲運動に伴う回転運動などについて述べる.