抄録
本研究では一般人口における抑うつ症状の性差による症候論的特徴を明らかにし,身体愁訴との関連を検討した.2000年に全国から無作為抽出した32,729人に施行された疫学調査データから20歳以上の成人19,850人の結果を解析した.この調査ではうつ病の評価にCenter for Epidemiological Studies Depression Scale(CES-D)を用い,これまでの研究に用いられてきた16点以上(CES-D16うつ病)と26点以上(CES-D26うつ病)という2つの区分点を設定し,症状や性差,身体愁訴との関連を検討した.CES-Dの総得点は男性より女性で有意に高かった.食欲低下,不眠,抑制,抑うつ気分,悲哀感の項目において女性で有意に平均得点が高かった.年代別では老年でCES-Dの総得点が有意に高かった.本調査においてCES-D16うつ病は29.6%,CES-D26うつ病は6.7%であった.CES-D16うつ病,CES-D26うつ病ともに女性で有意に頻度が高かった.身体愁訴の検討において女性は男性より有意に頻度が高かった.各身体愁訴とCES-D26うつ病との関連についてロジスティック回帰分析を用いて調べると男性でより関連が強かった.本疫学研究で,抑うつ症状の性差,身体愁訴の性差,およびうつ病と身体愁訴の性による関連の違いが明らかになった.抑うつ状態を呈する患者の臨床においてこれらの疫学的な特徴を考慮することは有用と考えられた.