2018 年 23 巻 2 号 p. 102-113
【目的】最近の医療費高騰の原因の一つにドクター・ショッピングが挙げられている.今回この一因として患者のコミュニケーション能力に焦点をあて,これに影響する可能性のある発達障害の特徴との関係を調べた.【方法・対象】当科から提案する発達障害傾向を基にした『不定愁訴スコア(Score of Indefinite Complaints,以下SIC)』は,本田が示した「面接時を含む発達障害を持つ患者の特徴」から,①視覚的構造化が必要(図画やプリントの利用,以下「視覚」),②同内容の発言の繰返し(以下「繰返し」),③会話内容のズレ(以下「ズレ」),④思考,行動等の限局やパターン化(以降「限局」)の4項目を点数化し比較した.対象は,当科不定愁訴外来の2013年9月1日~2017年6月30日までに初診となった女性患者92人である.【結果・考察】当外来初診以降の管理期間について,SIC以外では,加齢とともに管理が長期化する傾向は認められるが,当科初診前の医療機関受診数や初診時愁訴数に有意差はなかった.SICについては以下の内容で,医療者側・患者双方の理解の一助の可能性が示唆された.①「視覚」では,ゴシック体中心のプリントの使用②「繰返し」や「ズレ」には,質問を挟む形での話の進行,③「限局」では,服装や話し方等の変化が患者の変化と比例,④SIC合計点が高いほど,年齢・病悩期間・訴えの数に関係なく,コミュニケーションが苦手である可能性があり,患者の訴えを注意深く聞き,医療者の説明の理解度にも注意を要する傾向,などである.医療者側が患者に沿った医療を考え工夫することで,互いによりよい関係の構築ができる可能性があり,それがドクター・ショッピングの減少,さらには医療費高騰の抑制につながることを切に願う.