本研究は,医学的視点から評価された月経前症状の程度と,症状が与える心理社会的影響との関連を検討することを目的とした.なお,医学的視点では,①症状の有無,②日常活動への支障,の2点により月経前症状が評価される.
月経を有し,月経前に特に心身の変化を感じる女性254名にアンケート調査を実施した.月経前症状の程度は,PMDD評価尺度を用いてPMDD群,PMS群,支障なし群(症状はあるものの日常生活に支障は来していない者),対照群に分類した.症状が与える心理社会的影響の測定は,「心理的影響」「社会的影響」の2因子からなるPMS-Impact尺度を日本語訳し,妥当性,信頼性を検討した後に使用した.群間に有意な人数比があったため,分析にはダミー変数を用いた重回帰分析を行った.分析の結果,「心理的影響」「社会的影響」の各因子において,対照群に比して支障なし群の得点が有意に高かった.
以上の結果から,医学的視点では,日常生活への支障がないためにPMDDやPMSと評価されなくとも,症状によって心理的苦痛を抱いている女性の存在が明らかとなり,こうした女性を特定し,心理社会的支援につなげる重要性が考察された.また,PMS-I尺度日本語版は,因子分析によって原版の重要であると思われる項目が多く除外された.このことから,今後は日本人女性の抱く月経前症状による心理的苦痛の構造の解明と,その定量化を目指す必要性が示唆された.
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