女性心身医学
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原著
妊娠期から産褥期の自律神経活動の推移
和泉 美枝眞鍋 えみ子植松 紗代渡辺 綾子岩佐 弘一
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2019 年 24 巻 2 号 p. 149-156

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抄録

【目的】妊娠期から産褥期の自律神経活動の変化を明らかにする.【方法】妊娠初期,中期,末期,産褥期に縦断的に自律神経活動の測定と,属性に関する質問紙調査を行った.自律神経活動の変化を明らかにするために,一元配置反復測定分散分析およびBonferroni法を用いた下位検定を行った.【結果】63名の妊娠経過に異常のない妊婦を対象とした.副交感神経活動の指標であるcomponent coefficient of variance high-frequencyは,妊娠末期において初期に比べ有意に低く(p=.004),産褥期において末期に比べ有意に高かった(p=.041).交感神経活動の指標となるlow-frequency / high-frequencyと,総自律神経活動の指標であるcomponent coefficient of variance R-Rに有意な変化は認めなかった.心拍数は妊娠経過とともに高くなるが,産褥期に低下した.【考察】妊娠経過に伴い副交感神経活動は低下したが,交感神経活動と総自律神経活動に変化はなかった.心拍数は妊娠経過とともに高くなる傾向があった.循環血流量の増大に伴い,副交感神経活動が抑制され心拍数を増加することで心拍出量を維持するものと推測された.さらに,産褥期には妊娠期に低下していた副交感神経活動は上昇し,妊娠期に上昇していた心拍数は下降していた.これらから妊娠各期と産褥期の生理的変化に対し,ホメオスターシスを維持するために,自律神経活動を変動させていることが明らかとなった.

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© 2019 一般社団法人 日本女性心身医学会
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