女性心身医学
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原著論文
母体血胎児染色体検査(NIPT:Non-invasive prenatal testing)に関する遺伝カウンセリング前後での妊婦とパートナーの心理的ストレスの変化についての検討
廣瀬 達子白土 なほ子宮上 景子和泉 美希子四元 淳子関沢 明彦
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2020 年 25 巻 2 号 p. 129-135

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抄録

妊婦は児の先天性疾患の有無を不安に思い,出生前遺伝学的検査を検討するが,その前後では,妊婦やそのパートナーに強い心理的ストレスが生じている可能性がある.今回の研究では,検査前に実施した遺伝カウンセリング(Genetic Counseling:GC)の妊婦とパートナーへの影響をそれぞれの心理的ストレスの評価で調査し,GCの効果について検討することを目的とした.対象はNIPT(Non-invasive prenatal testing)を目的に2016年1月から2017年5月までに当院を初診した妊婦およびそのパートナー155組で,GC前後に無記名自己記入式質問紙調査を行った.GC前の質問紙は,妊婦の属性などを中心に構成し,GC後の質問紙ではGC前後の気持ちの変化をNRS(Numeric Rating Scale)で評価した.なお,本調査は当院倫理委員会の承認のもとで行われた.

 GC前後でのNRSは,妊婦群ではいずれの項目も有意に変化していた(ストレスp<0.0001,不安p<0.0001,気分の落ち込みp=0.001,安心感p=0.0095).パートナー群は気分の落ち込み以外で有意な差がみられた(ストレスp=0.0001,不安p=0.0002,安心感p<0.0001).妊婦とパートナーではGC前後のNRS点数の傾向に大きな差がなかったことから,GCでそれぞれへの適切な心理支援が実施されたことが示唆された.また,GC前後のNRSの変化値(GC後—GC前)は,安心感のみパートナー群のほうが有意に高かった.このことから,妊婦とパートナーでは安心を得る時期や内容が異なる可能性が示唆された.このように,GC来談者の心理評価を行うことにより,GCが妊婦とそのパートナーの不安やストレスの軽減につながると推察された.

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© 2020 一般社団法人 日本女性心身医学会
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