女性心身医学
Online ISSN : 2189-7980
Print ISSN : 1345-2894
ISSN-L : 1345-2894
原著
親への移行期における夫婦関係の良好さを支援するプログラムの効果
三上 由美子井村 真澄
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 26 巻 2 号 p. 165-179

詳細
抄録

本研究は,初めての子を持つ日本人夫婦に対して,親への移行期における夫婦関係の良好さを支援するプログラムを開発し,その効果を検証することを目的とした.研究は比較群を持つ事前事後テストデザインとし,無作為化のない準実験研究であった.対象者は関東圏内2施設で健診を受けている第一子妊娠中(34週以降)の日本人夫婦とした.プログラムは先行研究を参考に120分の出産前クラスとし,夫婦内の相互作用・コミュニケーションを促しながら先を予測した役割モデルの提示(情報提供)や役割リハーサル,役割を明確化させる夫婦間の話し合いの場を提供するものとした.予備的な調査を経て洗練させた後,介入効果を維持増幅させるために出産後にもカードの送付による情報提供を追加し,プログラム完成版とした.このプログラムを介入として,介入前(妊娠期)と出産1か月後,3~4か月後の夫婦関係指標(夫婦関係の調和性尺度,親密な関係尺度日本語版の下位尺度love·maintenance·ambivalence·conflict,心理的サポート尺度)を調査し,対照群80名,介入群72名の合計152名を分析の対象とした.対照群女性において,出産後3~4か月の各夫婦関係指標にネガティブな変化がみられたが,介入群ではほとんど時期的な低下がみられず,夫婦関係の良好さが維持されていた.反復測定分散分析で「時期」と「介入」の交互作用が確認されたmaintenanceおよび心理的サポートについて,性別を統制した重回帰分析を行ったところ,介入は出産前の指標や性別に関わりなく,出産後3~4か月のmaintenance(β=0.152,p=0.022,adj R2=0.346)および出産後3~4か月の心理的サポートに肯定的な効果を有した(β=0.172,p=0.018,adj R2=0.234).一方,性別が女性であることは,出産前の指標や介入にかかわらず,夫婦関係の良好さ指標に否定的な効果を有した.

著者関連情報
© 2021 一般社団法人 日本女性心身医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top