2024 年 29 巻 2 号 p. 182-188
【目的】母親のメンタルヘルスの内容に着目し,母親の養育システムの発達状況に不安及び抑うつ状態がどのように関連するのかを明らかにすることを目的とした.【方法】産後1~2カ月の母親200名に無記名自記式質問紙調査を実施した.調査内容は属性とメンタルヘルスとして愛着-養育バランス尺度短縮版(6因子),状態不安,エジンバラ産後うつ質問紙(以下,EPDS)とし,共分散構造分析を行った.【結果】120名を分析対象とした.愛着-養育バランス尺度の「敏感性:養育(子どもへの関心と理解)」は経産婦の方が有意に高かったが,ほかの因子,状態不安,EPDSの得点では初産と経産間で有意差はなかった.共分散構造分析では,状態不安から愛着・養育に有意なパスが得られた.EPDSからは愛着にも養育にも有意なパスは得られなかったが,愛着からEPDSへは有意なパスとなった.【結論】産後1~2カ月の母親の状態不安は有意に愛着を高め,養育を低めていた.EPDSから愛着・養育には直接的な関連はなく,産後うつの予防には母親の愛着に応えることが有用であることが示唆された.