女性心身医学
Online ISSN : 2189-7980
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29 巻, 2 号
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巻頭言
特集 第37回日本女性心身医学会研修会報告
原著
  • ―養育システムの発達と不安及び抑うつ状態との関連―
    武田 江里子
    2024 年29 巻2 号 p. 182-188
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/04
    ジャーナル フリー

    【目的】母親のメンタルヘルスの内容に着目し,母親の養育システムの発達状況に不安及び抑うつ状態がどのように関連するのかを明らかにすることを目的とした.【方法】産後1~2カ月の母親200名に無記名自記式質問紙調査を実施した.調査内容は属性とメンタルヘルスとして愛着-養育バランス尺度短縮版(6因子),状態不安,エジンバラ産後うつ質問紙(以下,EPDS)とし,共分散構造分析を行った.【結果】120名を分析対象とした.愛着-養育バランス尺度の「敏感性:養育(子どもへの関心と理解)」は経産婦の方が有意に高かったが,ほかの因子,状態不安,EPDSの得点では初産と経産間で有意差はなかった.共分散構造分析では,状態不安から愛着・養育に有意なパスが得られた.EPDSからは愛着にも養育にも有意なパスは得られなかったが,愛着からEPDSへは有意なパスとなった.【結論】産後1~2カ月の母親の状態不安は有意に愛着を高め,養育を低めていた.EPDSから愛着・養育には直接的な関連はなく,産後うつの予防には母親の愛着に応えることが有用であることが示唆された.

  • 竹川 悠起子, 小泉 智恵, 濱田 佳伸, 杉本 公平
    2024 年29 巻2 号 p. 189-196
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/04
    ジャーナル フリー

    本研究は,X病院で不妊治療を施行した早発卵巣不全(premature ovarian insufficiency:POI)患者がX病院での治療を終結するか別の選択肢を検討し意思決定に至るまでのプロセスを明らかにし,POI患者への情報提供や支援の在り方についての示唆を得ることを目的とした.2020年1月~2023年3月までにX病院を受診し,POIと診断され,カウフマン療法を基本としたエストロゲン製剤の持続的な投与を施行した患者8例を分析対象とした.患者の診療録から,患者背景,治療経過,治療選択に至る思考,行動,影響を与えた医師や支援者の介入,治療転帰などについて情報を収集し,複線径路・等至性モデルを用いた質的研究を実施した.その結果,POI患者の治療選択プロセスは,3つの分岐点(診断されたとき,治療に邁進したが結果が得られないとき,さらに治療を続けても凍結胚が得られないとき)をはさんで,第1期:診断,第2期:治療への邁進,第3期:治療不成功と治療継続,第4期:選択葛藤・受容の4期から構成された.第2期と第3期の分岐点,すなわち,繰り返し治療しても結果が得られず,患者が治療終結するか迷い始めたとき,期限を決めて治療に取り組むという医師の提案は,治療終結を考えるのに十分な時間を患者に与え,患者が納得いく選択を導き出すために重要な介入であった.最終的な治療選択の決断に夫は重要なキーパーソンだった.以上の治療選択プロセスは不妊の受容プロセスに一致しており,POI患者は第1期から第4期を経て,やがて不妊を受容していくものと考察された.そのための医師の関わり方や,心理士,配偶者の介入が重要である.治療中,医師は患者だけでなく夫にも積極的に関わり情報提供を行うこと,定期的な方針相談や心理カウンセリングは重要な介入であると考えられた.

  • 渡辺 久美, 江川 賢一
    2024 年29 巻2 号 p. 197-205
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/04
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究では,一般大学生とアスリート大学生の月経随伴症状,月経観,月経に対するヘルスリテラシーの実態を明らかにし,比較検討することを目的とした.【方法】対象は,大学1~4年生であり,一般大学生51名,アスリート大学生37名とした.調査方法は質問紙にて,対象者の背景,月経随伴症状,月経観,月経に対するヘルスリテラシーについて尋ね,両者を統計的に分析した.【結果】月経随伴症状において,月経前,月経中に一般大学生の方がアスリート大学生と比較して月経随伴症状を有していた(月経前:痛み因子(p=0.023),集中力因子(p=0.019),行動の変化因子(p=0.026)/月経中:痛み因子(p=0.000),集中力因子(p=0.005),行動の変化因子(p=0.004),負の感情因子(p=0.034)).月経観では,「月経は自然なもの」に有意差を認めた(p=0.003).月経に対するヘルスリテラシーは有意差を認めず,一般大学生の方がSNSからの情報を得る者が多かった(p=0.002).【考察】一般大学生とアスリート大学生の決定的な相違の因子は,運動量であった.両者における月経随伴症状について,アスリート大学生は日々の運動により,β-エンドルフィンが上昇し痛みを和らげていること,さらに一般大学生よりもマインドフルネス特性が高く,痛みの抑うつ的反すうが緩和されていることが考えられた.また,これらの月経随伴症状の差が,月経観やSNSからの情報入手の差異につながっている可能性があると考えられた.

総説
  • 野上 真央, 吉村 英一, 鈴木 真理子, 田尻 絵里, 中下 千尋, 濱田 有香, 塩瀬 圭佑, 阿曽(染矢) 菜美, 畑本 陽一, 田中 ...
    2024 年29 巻2 号 p. 206-219
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/04
    ジャーナル フリー

    やせ(低体重)は身体的,精神的にさまざまな悪影響を及ぼし,疾患リスクも高いことが報告されているが,日本人の20歳代女性では20.7%が体格指数(body mass index, BMI)でやせに該当する.本研究では,我が国における若年やせ女性の食生活や健康・栄養リテラシーに関する特徴を抽出することを目的として論文レビューを行った.国内外のやせ女性が形成される要因に関する査読付き論文で,2022年5月16日までに発表されたものを対象とした.検索には,医学中央雑誌(医中誌,日本語論文)とPubMed,CINAHL,Web of Science,SCOPUS(英語論文)を用い,対象年齢は13歳以上(平均年齢が30歳未満の論文は採用)でやせの情報があることを採用基準としたスコーピングレビューを行い,最終的には日本語論文48件,英語論文69件の合計117件を採用した.すべての論文を地理区分で分類した結果,日本を含む東アジア地域の報告が最も多く,英語論文に限った場合でも25件(32.9%)が東アジアの報告であり,そのうち日本が10件,大韓民国(韓国)が9件であった.スコーピングレビューの結果,日本を含む東アジアでは,やせの要因として「ボディイメージ」の報告が最も多く,次が「行動要因」であった.その他の国では「環境要因」の報告が最も多く,次が「食事」であった.やせは東アジア,とくに日本と韓国で生じている問題であり,これらの国でのやせは,栄養(食事)・身体活動・休養(睡眠)という健康の三要素に含まれない「ボディイメージ」に起因している可能性が示唆された.本研究では,日本語または英語で書かれた論文のみを対象にしたため,出版バイアスの可能性に留意する必要がある.また,採用した論文のほとんどが横断研究であったことから,因果関係を明らかにすることができなかった点にも留意する必要がある.やせの評価基準については国だけでなく,研究毎に異なる報告もあったため,今後は基準についても検討していく必要がある.

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