女性心身医学
Online ISSN : 2189-7980
Print ISSN : 1345-2894
ISSN-L : 1345-2894
原著
早発卵巣不全患者の治療選択プロセス:不妊治療を施行した8症例を対象とした複線径路・等至性モデルによる質的研究
竹川 悠起子小泉 智恵濱田 佳伸杉本 公平
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 29 巻 2 号 p. 189-196

詳細
抄録

本研究は,X病院で不妊治療を施行した早発卵巣不全(premature ovarian insufficiency:POI)患者がX病院での治療を終結するか別の選択肢を検討し意思決定に至るまでのプロセスを明らかにし,POI患者への情報提供や支援の在り方についての示唆を得ることを目的とした.2020年1月~2023年3月までにX病院を受診し,POIと診断され,カウフマン療法を基本としたエストロゲン製剤の持続的な投与を施行した患者8例を分析対象とした.患者の診療録から,患者背景,治療経過,治療選択に至る思考,行動,影響を与えた医師や支援者の介入,治療転帰などについて情報を収集し,複線径路・等至性モデルを用いた質的研究を実施した.その結果,POI患者の治療選択プロセスは,3つの分岐点(診断されたとき,治療に邁進したが結果が得られないとき,さらに治療を続けても凍結胚が得られないとき)をはさんで,第1期:診断,第2期:治療への邁進,第3期:治療不成功と治療継続,第4期:選択葛藤・受容の4期から構成された.第2期と第3期の分岐点,すなわち,繰り返し治療しても結果が得られず,患者が治療終結するか迷い始めたとき,期限を決めて治療に取り組むという医師の提案は,治療終結を考えるのに十分な時間を患者に与え,患者が納得いく選択を導き出すために重要な介入であった.最終的な治療選択の決断に夫は重要なキーパーソンだった.以上の治療選択プロセスは不妊の受容プロセスに一致しており,POI患者は第1期から第4期を経て,やがて不妊を受容していくものと考察された.そのための医師の関わり方や,心理士,配偶者の介入が重要である.治療中,医師は患者だけでなく夫にも積極的に関わり情報提供を行うこと,定期的な方針相談や心理カウンセリングは重要な介入であると考えられた.

著者関連情報
© 2024 一般社団法人 日本女性心身医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top