女性心身医学
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総説
月経前症候群や月経前不快気分障害に対する認知行動療法の研究動向
淨沼 和浩伊藤 大輔
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2025 年 29 巻 3 号 p. 337-346

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抄録

本研究の目的は,月経前症候群(premenstrual syndrome;PMS)や月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder:PMDD)に対する認知行動療法(cognitive behavioral therapy;以下,CBT)による介入プログラムをレビューし,従来,PMSやPMDDに対するCBTにおいて扱われてきた治療アウトカムや介入要素を整理することであった.抽出された14編の介入プログラムをレビューした結果,従来扱われてきた治療アウトカムとして最も多く用いられてきたのは月経前症状であった.また,生活支障度やquality of life(以下:QOL)に関わる変数を測定している研究は7編であり,コーピングなどのメカニズム変数について測定している研究は4編であった.次に,介入要素を一般的なCBT的技法と,PMSやPMDDに特化した技法に分類した.その結果,一般的なCBT的技法では,認知再構成法とリラクセーションが,PMSやPMDDに特化した技法では,PMSやPMDDに関する心理教育が多く行われていた.以上のことから,PMSやPMDDに対するCBTを実施する際は,月経前に起こる心身の不調についての正しい情報提供を行ったうえで,月経前期における症状への対処法としてリラクセーションスキルと,認知再構成スキルの獲得を目指すようなコンポーネントを中核として構成することが有用である可能性が示された.今後は,月経前症状による生活への影響の改善度も併せて測定し,効果的に月経前症状やQOLを改善させるために,CBTでターゲット変数となる自動思考や非機能的スキーマなどの認知行動的変数と,月経前症状や月経前期におけるQOLとの関連をより詳細に明らかにしていく必要があるだろう.

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© 2025 一般社団法人 日本女性心身医学会
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