女性心身医学
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総説
産後脱毛の実態把握と精神症状へ及ぼす影響
廣瀬 明日香
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2025 年 30 巻 2 号 p. 246-254

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抄録

産後は抜け毛が一時的に増えるといわれ,妊娠産褥期の毛周期の変化やエストロゲンが影響すると考えられているが,研究論文は極めて少ない.特にその精神面に与える影響を検討した論文はこれまでにほとんどない.先行研究と我々が行ったアンケート研究により,産後脱毛の実態把握と精神症状へ及ぼす影響について検討した.これまでの報告からは,産後脱毛は分娩後2~4カ月頃から始まり,6カ月から1年程度続く脱毛症とされる.妊娠中に起こる毛周期の変化の結果と考えられており,休止期脱毛に分類される.一方,脱毛の程度や頻度を評価した研究論文はなく,あるレビュー論文では正確な発生率は不明であるため,あえていうなら存在しないとしている.私たちのアンケート研究からは91.8%が多少なりとも産後脱毛を経験していた.また,脱毛が多少なりともあった人のうち,73.1%がそれを不安またはストレスに感じていたことがわかった.産後脱毛の開始時期,ピーク時期,終了時期の平均はそれぞれ2.9カ月,5.1カ月,8.1カ月であった.また,多重ロジスティック回帰分析では授乳期間が長いことが産後脱毛と関連することが明らかとなり,エストロゲンの低下との関連を示唆すると考えた.産後脱毛と精神症状との関連については,多重ロジスティック回帰分析でGeneralized Anxiety Disorder 2-item(GAD-2)「緊張感・不安感」に関連する因子を調査すると,初産婦,産後脱毛の程度の強さ,AIS高値が独立して関連した.産後脱毛が最も強かった群では,なかった群に比べて,オッズ比4.47,95%信頼区間(1.34-14.93)であった.産後脱毛の程度はGAD-2による不安と関連することが明らかになった.今後,より一層の科学的知見の集積が求められる.

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