女性心身医学
Online ISSN : 2189-7980
Print ISSN : 1345-2894
ISSN-L : 1345-2894
分娩期,育児期の母親の不安調査
佐藤 千恵佐藤 陽子金田 江理子三浦 ふさ子永井 堅永井 宏
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 5 巻 2 号 p. 174-179

詳細
抄録
分娩は育児の貴重な通過点となる出来事である.女性が安心して分娩や育児に望む意義は大きい.より良い分娩を提供するためにはどのような援助が必要か,また育児期の不安を検討するため,分娩期と育児期の母親の持つ不安について調査した.対象:平成12年5月中旬から一ヵ月間に当院で分娩した初産婦19名,経産婦22名の分娩前(妊娠36週時頃)と分娩後(産褥入院中),平成11年7月から8月に当院で分娩した初産婦14名,経産婦11名(調査時,分娩後約10ヵ月)を対象とした.方法:STAIを使用して不安の程度を表す指標とし,合わせて当院で作成したアンケート用紙を用いて,実際の不安の内容を調査した.結果:(1)分娩という状況に際し,特性不安が低い人でも状態不安は高まりやすい.(2)特性不安が高い人は状態不安も高い傾向にある.(3)前回の妊娠歴,分娩歴の異常や「痛かった」思いが状態不安を高める.(4)分娩開始前の不安の内容は,初産婦は未知の経験である痛みに対し不安を持ちやすい.経産婦は前回の分娩体験が不安に影響し,その内容がより具体的になる.(5)分娩開始後の不安の内容は,分娩進行状況について,痛みについて,児の状態についてなどであり,たとえ分娩が順調に経過していても,また初産婦,経産婦に関わらず様々な不安を持つ.(6)10ヵ月経つ母親の不安においても,特性不安の高い人は状態不安が高い傾向にあり,不安の内容は,自分の体調が良くないこと,夫が育児に協力的でないこと,子供に病気や障害があること,自分の子育てや躾に自身が持てないこと,身近に相談相手がいないことであった.分娩期,育児期の母親の不安を分析し,状態を把握するためにSTAIの活用は有効である.STAIの分析により,特性不安,状態不安の高い母親に対するケアには特に注意を払い,妊娠から分娩,育児まで継続して,個別に合ったケアを提供する必要性が示唆された.
著者関連情報
© 2000 一般社団法人 日本女性心身医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top