抄録
ペクチンは双子葉植物の主要な細胞壁多糖の一つである。我々はこれまでにダイズ実生を用いてペクチンの糖鎖の合成・修飾に関与するガラクツロン酸転移酵素[1]、メチル基転移酵素[2]の性質を明らかにした。本研究ではペクチン側鎖のβ-1,4-ガラクタン合成に関わるガラクトース転移酵素 (GalT) の性質を検討した。ダイズの黄化胚軸から調製した膜画分を酵素源、UDP-[14C]Galを供与体、市販のβ-1,4-ガラクタンの部分酸分解物を受容体としてGalの転移量を測定した。GalTの最適pHは6.5、最適温度は25℃で、25 mM Mn2+、0.75% Triton X-100により活性は促進された。市販β-1,4-ガラクタン(Mr>150,000)は低い活性しか示さないが、Mr約60,000の画分が高い受容体活性を示した(比活性約 3,000 pmol/min/mg protein)。内在性の受容体を用いた場合の転移活性は僅かだった。放射標識転移産物をエンド-β-1,4-ガラクタナーゼで分解すると主に放射活性を有するβ-1,4-Gal2、Galが得られるので、Galの転移はβ-1,4-結合であることが確認された。
同様に、ピリジルアミノ (PA) 基で蛍光標識したβ-1,4-ガラクトオリゴ糖 (DP=1-7) をオリゴ糖受容体として、Galの取り込みをHPLCを用いて調べたところ、Gal7-PAからGal8-10-PAが生ずる鎖長伸長が認められた。
[1] Biosci. Biotechnol. Biochem., 65 (2001) 1519-1527
[2] Planta, 210 (2000) 782-791