抄録
ホウ素(B)は高等植物の微量必須元素であり、その欠乏は成長や形態形成に著しい影響を及ぼす。我々はこれまでに低ホウ素条件下(5 μM、0 μM)で成長可能なギンドロ培養細胞系 (1/20-B、0-B) を確立し、B欠乏耐性機構について研究を行ってきた。その結果、1/20-B細胞では細胞壁中のBによるペクチン間の架橋の減少をカルシウム(Ca)による架橋の形成によって補っており、架橋の形成を調節するペクチンメチルエステラーゼ(PME)活性の上昇が耐性機構に重要であることが示唆された。今回、我々はPME活性と培地中のB量との関連を調べるために1/20-B、0-B、及び100 μMのBを含むMS培地に移植した1/20-B細胞 (1/20-BR)のPME活性を耐性を持たない1/1-B細胞と比較した。継代後14日目のPME活性は1/20-B細胞では1/1-B細胞の約1.6倍であった。細胞壁中のCa量が1/1-Bよりも少なく、架橋形成が耐性に関与していないと考えられる0-B細胞でも同程度の活性が検出されたことからB欠乏によってPME活性が誘導される可能性が示唆された。一方、1/20-BR細胞では継代回数の増加に伴い活性が低下し、5回目の継代では1/1-Bの1.2倍であった。しかし、活性の低下が遅いことからPMEの誘導に対するBの関与は間接的なものであると考えられた。