抄録
核遺伝子の転写は、一般に転写量の調節を担う上流調節領域(調節プロモーター領域)と、転写開始の位置や方向を決定するコアプロモーターによって、二重に制御されている。最近の研究によって、コアプロモーター領域も転写の特異的調節に関わっていることが明らかになってきた。コアプロモーターを構成するモジュールとしてはTATAボックスとイニシエーター(Inr)がよく知られているが、後者については配列の保存性が低く、植物ゲノム中で、実際にどのような塩基配列がどの程度の強さで転写開始位置を決めるのかは、まだよくわかっていない。本研究では、高等植物由来のin vitro転写系を使って、転写開始点前後の3塩基の組み合わせ全64通りについて、それぞれもつ相対的な転写開始シグナル強度を測定した。さらに、同様な実験をHela細胞由来のin vitro 転写系で行い、両者の結果を比較した。その結果、転写開始点の選択機構に従来予想されていなかった規則性のあること、さらに、動物と植物の系のもつ相似点、相違点などが明らかになった。