抄録
傷に応答して、数分から1時間で一過的に転写量が上昇するタバコの遺伝子群の一員として、WIPK(wound induced protein kinase)とWIZZ (wound induced leucine zipper zinc finger) が単離されている。WIPKはMAPキナーゼを、WIZZはWRKY型の転写因子をコードしており、どちらも修復や防御機構の発現調節に関わっている。しかし、WIPKとWIZZ自体の転写の活性化が、どのような仕組みで起こっているのかは明らかではない。本研究は、プロモーター解析によってそれらの転写活性化機構に迫るものである。
WIPKとWIZZの上流領域から、それぞれ1.1kb、1.5kbの断片を単離し、レポーター遺伝子(GUS/LUC)とのキメラ遺伝子を構築し、タバコに導入した。傷処理によりWIPKは傷口の周りで、WIZZは維管束で強く発現していた。それぞれ数種類のディレーションコンストラクトを作製したところ、WIPKは上流0.4kb以内に、WIZZでは0.3kb以内にシス配列が存在することが示唆された。また、WIPKは、TMV感染による過敏感反応でも、転写量が上昇することが分かっている。プロモーター解析により、過敏感反応による壊死斑のまわりでWIPKが強く発現していること、傷害応答性と同様に上流0.4kb以内にシス配列が存在することを明らかにした。