抄録
PENDタンパク質は、エンドウ葉緑体の包膜に存在するDNA結合タンパク質である。N末端近くにbZIP様のDNA結合ドメインがある。シロイヌナズナの第3染色体にコードされるATF4F15.280と、アブラナの核の転写因子として発表されているGSBF1は、エンドウのPENDと相同である。アブラナ・ソメイヨシノ・キュウリからも、相同なゲノム配列を得た。また新たにトマトやコムギなどのcDNAにも相同な配列が見つかった。PENDタンパク質が被子植物に広く存在し、cbZIP領域とC末端の膜貫通領域が特に良く保存されていることがわかった。PENDタンパク質の全長を含むGFPとの融合タンパク質が葉緑体に局在し、さらにN末端の15アミノ酸を除いたコンストラクトでは核に局在することが分かり、これはウエスタンブロット分析でも確認された。以前の研究で、N末端側のコンストラクトでは葉緑体に局在し、約半数の細胞ではさらに核にも局在することが報告されている。シロイヌナズナとアブラナのゲノム配列を用いたGFPとの融合タンパク質でも同様な結果が得られた。さらに安定な形質転換体では、ほとんど葉緑体だけに局在した。この結果からPENDタンパク質は通常葉緑体の包膜に局在するが、葉緑体が傷害を受けた場合には細胞核に輸送されるのではないかと考え、これを実証する実験を進めている。