日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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亜硫酸還元酵素による可逆的DNA凝縮を介したプラスチド核様体の転写調節
*関根 康介長谷 俊治高橋 秀樹佐藤 直樹
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p. 135

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抄録
プラスチド核様体はプラスチドDNAと複数のタンパク質との複合体であり,プラスチドの発達段階によって形態的,分子的変化を伴う.エンドウでは,葉緑体核様体の主要な構成成分である70 kDaタンパク質が亜硫酸還元酵素(SiR)であると同定され,また,トウモロコシの組換えSiRを使った実験からSiRがDNAを凝縮する機能を持つことが示された。組換えSiRの添加によって核様体のDNA凝縮が強固になり,ヘパリンによるSiRの可溶化でDNA凝縮が弛緩されることも確認された。単離核様体を使ったin vitro転写系において,SiRによるDNA凝縮が転写を抑制し,DNA凝縮の弛緩によって転写が活性化されることが分かった。本研究ではSiRのDNA結合に関して,さらに詳細な検討を加えた。SiRとGFPの融合遺伝子を導入したシロイヌナズナの葉肉細胞と,その変異体から単離した葉緑体核様体の顕微鏡観察では,SiRがストロマと核様体の両方に存在している可能性が示唆された。また,高等植物と同様,フェレドキシン型SiRを持つラン藻では,核様体にSiRは存在しないと思われる。現在エンドウSiRのcDNAを単離しており,高等植物におけるSiRのDNA結合活性についてタンパク質の構造比較からのアプローチも試みる予定である。
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© 2003 日本植物生理学会
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