抄録
クラミドモナスの低光呼吸突然変異株(RPR1)では、高CO2生育細胞でも大気条件適応細胞でも、その光呼吸速度は野生株の半分程度しかない。その光合成のCO2に対する親和性は、高CO2生育細胞では野生株より明らかに高いが、大気条件またはそれ以下に適応した細胞ではその差はあまり顕著ではない。これまでに得られた結果から我々は、この株の光呼吸が小さいのは、CO2感受機能の低下によりCO2濃縮機能が高まったためではと推測している。その突然変異遺伝子の解明の手がかりを得るために、本研究ではRPR1-N21株を用い、CO2環境適応パターンのより詳細な検討を行うとともに、cDNAマクロアレイを用いて低CO2適応時の発現遺伝子の野生株等との比較解析を行った。5% CO2生育細胞をいろいろなCO2濃度に24時間適応させたところ、光合成速度はN21と野生株のいずれでも、非常に低いCO2濃度、近飽和CO2濃度、飽和CO2濃度のそれぞれで測定した場合で、異なる適応条件への応答がみられた。また適応CO2濃度に関わらず、非常に低い測定CO2濃度では常にN21が野生株より光合成飽和度が高く、近飽和の測定CO2濃度ではその反対であった。このような二相性を示す適応パターンとクラミドモナスのCO2濃縮機構の関係、およびN21の突然変異遺伝子との関係について、cDNAマクロアレイ解析の結果と共に考察する。