抄録
ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)は、C4植物において初期炭酸固定反応を触媒する鍵酵素である。PEPCはN末端近傍の特定のSer残基の光依存的リン酸化を介して日周的に活性調節される。我々はこれまでに、このリン酸化に関与するPEPC特異的リン酸化酵素(PEPC-PK)のcDNAをC4植物のFlaveria trinerviaからクローニングすることに成功している1)。また、トウモロコシから精製したPEPC-PKがレドックス制御を受けることを示してきた2)。
今回、大腸菌で発現させた組換え体の精製法を確立し、以下の知見を得た。精製した組換え体PEPC-PKはN-エチルマレイミドにより不可逆的に不活化した。さらに酸化型グルタチオン及びCu2+または透析による空気酸化によっても不活化され、DTT濃度依存的に活性回復した。PEPC-PKの酸化・還元状態を可視化するためにSH修飾試薬AMS (M.W=536.44)で修飾した後、非還元的SDS-PAGEに供した。その結果、酸化型・還元型の泳動度の異なる2つのバンドがモノマーの位置に検出され、DTT濃度依存的に量比が変化することが確認された。これらの結果より、PEPC-PKは内部にジスルフィド結合を持ち、酸化還元状態に応じた開閉により活性調節されることが示唆された。
1) Tsuchida, Y. et al. FEBS Lett. 507(3): 318-22 (2001)
2) Saze, H. et al. Plant Cell Physiol. 42(12): 1295-1302 (2001)