抄録
アンモニウムトランスポーター(AMT)は、NH4+の能動的な膜輸送を行なう担体である。シロイヌナズナ、トマト、イネなどで単離された AMT1に関する研究は進んでいるが、AMT1とは異なるAMT2が2000年にシロイヌナズナから単離された。EST検索の結果、イネにおいてもAMT2ホモログ遺伝子が存在していたことから、本研究ではイネにおけるAMT2遺伝子群の探索と発現様式の解析を行なうことを目的とした。
ESTとゲノムの塩基配列を元にRACE法およびPCR法により、完全長の翻訳領域を含む2つのcDNAクローン(OsAMT2;1、OsAMT3;1)を得た。OsAMT2;1は酵母AMT欠損変異体の機能を相補することができたことから、OsAMT2;1はNH4+輸送能を有することが示された。また、OsAMT2;1とOsAMT3;1の推定アミノ酸配列を用い、イネゲノム配列に対して相同性検索を行なった結果、新たに5つのホモログ遺伝子を見出した。これらは系統樹解析の結果、3つのクラスターに分類された(OsAMT2;1-2;3、OsAMT3;1-3;3、OsAMT4;1)。OsAMT2群とOsAMT3群は、推定アミノ酸配列でAtAMT2に対してそれぞれ85%、84%という高い相同性を示した。RT-PCR解析の結果、これらの遺伝子はOsAMT4;1を除いて根および葉身においてmRNAが検出された。AMT2;2 mRNA量は、根においてNH4+Cl供給にともなって0.5時間後から増大していた。AMT3;3 mRNA量は、葉身の老化に伴い増大していた。現在、これらのホモログ遺伝子について詳細な発現解析を行なっている。