抄録
体細胞から比較的容易に個体再生を行うことができるニンジン不定胚形成系を用いて、新規な不定胚形成制御遺伝子の単離を試みた。
ニンジンではオーキシン存在下で不定胚形成能を有するEmbryogenic Cell (EC) を維持することができる。この状態においてはECからの不定胚形成は認められず、培地からのオーキシン除去により初めて不定胚が形成される。従ってこの誘導過程において、発現してくる遺伝子が不定胚形成に必要な遺伝子であると考えた。そこで、オーキシン除去前のECとオーキシン除去後のECから Total RNAを抽出して、サブトラクション法により、オーキシン除去後特異的に発現増加してくる遺伝子として18B-H10をを単離した。この18B-H10は全長1523bpであり、推定アミノ酸残基は443残基であった。ホモロジー解析の結果、ニンジンEP1と最も高い相同性があり、自家不和合性に関与しているS-locus-glycoproteinとも相同性があった。18B-H10はECをオーキシン除去処理することにより発現誘導され、オーキシン除去後8時間をピークに発現量は低下した。一方、実生や不定胚形成能を喪失したNon-Embryogenic Cellでの発現は認められなかった。
以上のように今回単離した18B-H10は不定胚形成能を有する細胞において、オーキシン除去により一過的に発現することが明らかとなり、現在その生理的役割について解析を進めている。