日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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ニンジン体細胞を2,4-D処理で特異的に発現する遺伝子の解析
*佐野 卓磨保田 浩上田 寛子島田 千英子高橋 麻衣子中阪 聡亮大和田 琢二増田 宏志
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p. 22

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抄録

 ニンジンの胚軸切片を2,4-Dで処理し、次いで2,4-Dを含まない培地へ移して培養すると体細胞胚が形成される。2,4-Dがどのようにして分化している体細胞を胚形成可能な細胞に転換するのかは非常に興味がもたれる点である。我々は胚軸切片を2,4-D処理することで特異的に発現する遺伝子を検索することが体細胞から胚形成可能な細胞に転換する機構を解明する糸口になるのではないかとの認識で本実験を始めた。
 ニンジン胚軸切片を、(1)2,4-Dで48時間培養したもの、(2)2,4-Dで24時間培養し、次いで2,4-Dのない培地で24時間培養したもの、(3)対照実験として2,4-Dのない培地で48時間培養したもの、の3種を試料として、これらからそれぞれ全RNAを調製し、これら3つの試料をDifferential display法を用いて比較した。その結果2,4-Dで処理した試料にのみ存在するバンドをクローニングし、部分塩基配列を決定した後、定量RT-PCRによる解析結果から最終的に2,4-D処理によって特異的に発現する3つの遺伝子(No.130、No.151、No.209)が得られた。これら3つの遺伝子はいずれも体細胞胚形成の球状胚までの初期段階に発現し、それ以降の心臓型胚、魚雷型胚および幼植物体の段階では検出されなかった。現在はこれら3つの遺伝子についてさらに上流の塩基配列の解析を進め、その同定を試みている。

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© 2003 日本植物生理学会
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