抄録
我々はこれまで、シロイヌナズナの乾燥・塩・低温応答性の遺伝子の発現調節に関わる転写因子DREBについての解析を行い、さらにイネにおけるDREBのホモログを同定した。これらDREB遺伝子を導入したシロイヌナズナでは、多数のストレス誘導性遺伝子の転写産物の蓄積及びストレス耐性の向上を確認した。さらにイネにDREB遺伝子を導入したところ、2つのイネの乾燥・高塩・低温ストレス誘導性の遺伝子が過剰発現することを見出した。このストレス誘導性遺伝子の一つはそのプロモーター中にDREBが結合するDREが存在していた。本発表では、イネにおけるDREB遺伝子の機能を、形質転換イネを用いてさらに詳細に調べた。
DREB導入イネの耐性試験を行い、乾燥耐性が上昇していることを確認した。また、これら形質転換体中の遊離アミノ酸を分析したところ、ストレスのないコントロール状態でも適合溶質であるプロリン濃度が上昇していることが明らかになった。さらにイネのcDNAマイクロアレイによる解析の結果、前述の2遺伝子の外にもDREBのターゲットと思われる遺伝子が見出された。が、イネにおいてもシロイヌナズナと同様、DREB遺伝子の導入により複数のターゲット遺伝子の発現が誘導され、その結果適合溶質であるプロリンの上昇などの生理現象が起こり、DREB導入イネの乾燥耐性が上昇したと考えられる。