抄録
私たちは、イネの登熟初期におけるデンプン蓄積のメカニズムを明らかにする目的で、登熟初期の未熟種子で一過的に発現が誘導されるSNF1相同遺伝子産物(OSK)の機能解析を進めている。OSKに特異的な合成基質のリン酸化能を指標に、イネの未熟種子からOSKホロ酵素を部分精製し、ゲル濾過法により分子量を決めたところ、約130kDであった。酵母のSnf1や動物のホモログであるAMPKはα, β, γの3量体(分子量120~140kD)から成っており、イネのOSKホロ酵素も同様のサブユニット構造を持つと予想された。そこで酵母を用いたTwo-hybridスクリーニングによってOSKと相互作用するタンパク質を探索した。単離したクローンは最終的に16種類のcDNAに分類され、その中には3種類のβサブユニットのホモログ(β#15, β#17, β#19)が含まれていた。この3種類のβサブユニットのアミノ酸配列を比較すると、β#17と β#15は酵母Snf1複合体のβサブユニットであるGAL83と全長にわたって相同性を示したのに対して、β#19はC末側半分(ASCドメイン)のみを含む短いタンパク質であった。OSKには3種類の分子種(OSK1, OSK24, OSK35)が存在するので、特異的な組み合わせがあるかどうかを調べるために登熟過程における発現パターンを比べたところ、3種類のβサブユニットの遺伝子はいずれもOSK1に似た発現パターンを示した。