抄録
カリウムイオン(K+)は、あらゆる生物の細胞内の主要な陽イオンであり、K+輸送システムによって高濃度に維持されている。微生物や植物にはK+トランスポーターとK+チャネルの両者が存在し、外界環境変化への応答や細胞内の情報伝達に深く関与している。これまでに数々の生物種からK+トランスポーター遺伝子が単離され、その機能や構造が調べられてきた。らん藻Synechocystis sp. PCC6803のゲノムには植物のNa+/K+トランスポーター(HKT系)や海洋性細菌Vibrio alginolyticusのK+トランスポーター(KtrB)と高い相同性を示すK+トランスポーター遺伝子が存在している。我々はこれまでに、このらん藻の本遺伝子をK+輸送能欠損大腸菌変異株(trk、kdp、kup)に導入して解析を行い、本遺伝子産物がK+輸送能を有することを明らかにしている。らん藻における本遺伝子の生体内での機能と役割を明らかにするために、本遺伝子のらん藻破壊株と野生株を用いて解析を行った。その結果、本遺伝子破壊株はK+輸送能を失っていることが分かった。また大腸菌発現系において、輸送体のK+輸送についてさらに検討したところCCCPを添加するとK+輸送活性が阻害されることを見いだした。このことは、K+輸送にproton motive forceが関わっていることを示唆している。