抄録
液胞は無機イオンや代謝産物の蓄積の場として知られており、植物の膨圧形成に重要な役割を果たしている。さらに、代謝産物の移動、細胞内成分の分解といった、植物細胞の恒常性の維持に液胞が重要な働きをしていることもよく知られている。しかし、これらの機構の解析は今だ十分ではなく、さらなる解析には収率がよく、構造的に無傷で、しかも機能的に活性の高い液胞の単離・精製法が必要となってくる。今回、我々はArabidopsisの培養細胞より、intact液胞を多量に単離する方法を確立し、調整した液胞の諸性質の検討を行った。Intact液胞は、浸透圧ショックによるプロトプラストの破壊後、Percollの密度勾配遠心により単離された。細胞膜H+-ATPase, 液胞膜H+-ATPase, Bipの抗体を用いたWestern解析による純度の検定と、標識酵素の活性測定を行った結果、解析に十分な純度と膜のintegrityを持つ液胞が調整されていることがわかった。今後、この単離液胞をゲノム情報と組み合わせることで、液胞膜上に存在すると考えられる種々の膜輸送体や液胞内酵素の同定、あるいは液胞内代謝産物の測定を進める予定である。