抄録
水チャンネルは植物の細胞膜と液胞膜に存在し、植物体内での水輸送に重要な役割を果たす可能性が示されている。イネにおける水チャンネルの機能および低温・冷温応答等を明らかにするため、イネの3種の細胞膜型水チャンネル(RWC1, RW2, RWC3)に着目し、そのmRNA発現量の変動を解析した。
発芽2週間後の幼苗を葉、茎、根に分け、RWC1, RWC2, RWC3の各mRNAの3'非コード領域をもとに作成した特異的プローブを用いてmRNA量を解析したところ、RWC1, RWC2はともに全ての器官で発現していた。RWC1は葉で最も多く発現していたのに対し、RWC2は根で最も多く発現していた。一方、RWC3は根特異的に発現していた。根における各mRNA発現量の日周変動を解析したところ、RWC3が最も強いリズムを示し、明期前半に最大で暗期前半に最低となった。RWC2は明期半ばに最大で明期終了時に最低となるゆるやかなリズムを示した。RWC1はRWC2と似たパターンを示したが、そのリズムは不明瞭であった。
低温処理を受けたイネ幼苗の吸水量は激減するが、現在、低温ストレスを受けた幼苗根での水チャンネル遺伝子発現量の変動についても解析を進めている。また冷温ストレスによる生殖器官でのmRNA発現量の変動等についても解析を進めている。これらの結果をもとに、低温・冷温ストレスと水チャンネルの関係について考察したい。