抄録
これまでに我々は、イネカルスが10%グルコースを含む培地では多くの澱粉を蓄積すること、また、その条件下ではAGPase large subunit(accession D50317 以下AGPL)の発現量が澱粉含量の増加と比例して上昇することを報告した。今回は澱粉蓄積のメカニズム、つまり何を契機として澱粉合成が開始されるのかを明らかにするためにまず、培地中への糖添加に対する澱粉合成および糖代謝関連遺伝子の発現応答について調べたので報告する。N6D培地を基本とした3種類の培地(糖を含まない、3%スクロースを含む、または10%グルコースを含む)を用いてイネカルスを培養し、継代後1日おきに3日間サンプリングし、全RNAを調製した。これらを鋳型とした定量的RT―PCRによって、9種類の糖代謝および9種類の澱粉合成関連遺伝子の発現を調べた。その結果、発現量が、(1)澱粉含量の増加と比例するもの、(2)反比例するもの、(3)糖の添加で誘導、(4)抑制されるもの、(5)ユビキタスなもの、さらに(6)極めて低いもの、の6様式に分類された。今回調べた遺伝子中でもやはりAGPLの発現だけが澱粉の蓄積と比例していた。今後はこの条件で誘導されるであろうAGPLの発現を制御している因子の探索を行う。