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多くのラン藻種における貯蔵炭水化物はグリコーゲンであり、これは、植物デンプン(アミロペクチン)の原始的な形であると考えられる。植物におけるアミロペクチン構造の形成機構を明らかにすることを目的として、ラン藻 Synechococcus sp. PCC 7942 株のポリグルカン代謝酵素変異株を作成した。
グリコーゲン合成酵素(GS)、分枝酵素(BE)、イソアミラーゼ(ISA)各遺伝子のコード領域内にクロラムフェニコール、スペクチノマイシン、カナマイシン耐性遺伝子がそれぞれ挿入した形質転換株を得た。BE および ISA 変異株については、野生型遺伝子が消失していることを確認した。単一遺伝子の変異株に加え、BE と ISA については二重変異株を作成した。
野生株および変異株における貯蔵多糖の分枝構造について、α-1,6-結合切断後、キャピラリー電気泳動法により解析を行った。分解後の Synechococcus のグリコーゲンは、グルコース鎖重合度(DP) 6 の位置に分布極大を示した。BE 変異株では、DP 6 のピークが著しく減少し、逆に長鎖(DP ≥ 10)の割合が増大した。ISA 変異株では、短鎖(DP 2 から 3)の含量が増え、DP 8 前後の糖鎖が減少した。BE/ISA 二重変異株では、それぞれの変異株での影響が相加的に現れた。