抄録
トランスジーンローカスのジャンクション領域の解析から、マトリクス結合領域(MAR)がトランスジーンの近傍に存在することが知られている。本研究では、パーティクルガン法で得られたBY-2形質転換細胞のトランスジーンローカスのジャンクション領域から単離したMAR配列(TJ1)を用いてMAR配列の付加や向きが外来遺伝子の組込み効率にどのように影響するかを調べた。
コントロールベクター(35Ω-sGFP(S65T))と、そのGFP遺伝子発現カセットの5’および3’側にそれぞれ向きを変えてTJ1を挿入した4つのベクターを別々にパーティクルガンを用いて導入した。導入処理後5・10・20・30日後のGFPを発現した細胞塊数を測定した結果、5日後から10日後にかけて著しい減少が観察されたが、それ以降の減少はほとんど見られなかった。遺伝子導入30日後のGFP発現細胞塊のサザンハイブリダイゼーションを行ったところ、トランスジーンはゲノムにインテグレーションされていることが解った。GFP発現細胞塊数はTJ1を挿入することによっておよそ2倍に上昇した。
このことから、TJ1配列の付加によりトランスジーンのゲノムへのインテグレーションが促進されることが解った。MAR配列の方向による明らかな違いは見られなかった。