抄録
ラン藻Synechococcus sp. PCC 7002のgroESL遺伝子のプロモーター領域に結合するタンパク質を同定し、昨年の本大会で報告した。この新規タンパク質Shl-1のアミノ酸配列中には、Nudix motifというヌクレオシドニリン酸誘導体を加水分解する酵素Nudix hydrolaseに特徴的な配列が存在していた。大腸菌で発現させ、精製したShl-1について基質特異性を解析した結果、ADP-riboseに対して高い加水分解活性を示したが、NADHやATP、GTPなどその他のヌクレオシド二リン酸誘導体に対する活性はほとんどなかった。遊離ADP-riboseはNAD+の主な代謝産物であり、その蓄積は細胞にとって有害であるため、Shl-1はこれを分解する機能を担っていることが推測される。現在、shl-1遺伝子の破壊株を作製し、in vivoにおけるNudix hydrolaseとしての役割、およびgroESL遺伝子の発現調節との関連性を解析している。また、Synechocystis sp. PCC 6803のゲノムにShl-1と相同性を示す機能未知のタンパク質をコードする遺伝子がある。このタンパク質を大腸菌で発現させた結果、ADP-riboseを加水分解したため、Shl-1のホモローグと考えられる。