抄録
我々は、ABAによるシグナル伝達機構を明らかにすることを目的に、シロイヌナズナのABA誘導性遺伝子rd29Bの発現解析ならびに発現に異常が見られる変異体の単離を行っている。シロイヌナズナを用いて、rd29Bと、その発現に関与することが示唆されている転写因子(AREB1, ABI5等)の遺伝子発現パターンを比較した結果、発芽初期には成植物体とは異なるABA応答性発現制御が働いていることが示唆された。また、rd29Bのプロモーターとルシフェラーゼ(LUC)の融合遺伝子を導入したシロイヌナズナを用いて、アクティベーションタギング用ベクターpPCVICEn4HPTあるいはpSKI015を利用したアクティベーションタギングまたはEMS処理を行い、変異体プールを作出した。得られた変異体プールの中から、発芽2日後の植物体、あるいは発芽10-12日後の植物体において非ストレス条件下でもLUCが発現する変異体、あるいは塩ストレス・ABA処理時にLUCの発現が異常になる変異体をスクリーニングした。これまでに行った変異体スクリーニングから、発芽2日後のABA応答が野生株と異なるライン、発芽10-12日後のABA応答が野生株と異なるライン、あるいは両者のABA応答が野生株と異なるラインが得られている。現在、スクリーニングを続けるとともに、得られた変異体の解析を行っている。