抄録
シロイヌナズナを用いた遺伝学的解析から花成制御機構の一端が明らかになりつつある。様々な経路からの花成シグナルはFT、SOC1/AGL20、LFY遺伝子(経路統合遺伝子)に統合され、花成の最終段階に伝えられる。花成統合因子の一つであるFT 蛋白質の生化学的機能については未だ不明な点が多く残されているが、我々はFTの下流でFD遺伝子が機能していることを遺伝学的手法を用いて明らかにした。fd-1は非常に弱い遅咲き表現型を示すが、35S::FTの早咲き表現型に対しては強い抑圧効果を示す。このことから、FD の活性は35S::FTの早咲き表現型に必要であると考えられる。また、早咲き表現型に対する抑圧効果は35S::FTに特異的であり、35S::SOC1/AGL20あるいは35S::LFY (Nilsson et al., 1998) の早咲き表現型には影響を与えないことも判明した。ポジショナルクローニングによりFD遺伝子を同定したところ、 bZIP 転写因子をコードしていることがわかった。第4染色体上のFDを含む約 1Mb の領域は第2染色体上に重複した領域をもち、そこにはFDと高い相同性をもつ遺伝子FDP(FD PARALOG) が含まれる。FDの発現レベルは非常に低いものの、長日および短日条件で発現が確認された。また、yeast two-hybrid system を用いたタンパク質間相互作用の検討からFD はFT と相互作用することが判明した。このことからFT は FD とタンパク質間相互作用することで FD機能を調節する役割を果たしていると考えられる。