抄録
近年、ジベレリン(GA)の生合成やシグナル伝達に関与する多数の遺伝子が単離されている。これにより、GA合成酵素遺伝子とシグナル伝達に関与する遺伝子の発現解析をとおして活性型ジベレリン(GA)の合成と受容についての知見を得ることが可能となった。我々は、イネGA合成酵素遺伝子OsGA20ox1, OsGA20ox2, OsGA3ox1,OsGA3ox2とシグナル伝達に関与する遺伝子D1 (G protein a-subunit), SLR1, GAMYBの器官特異的な発現を、プロモーター::GUS形質転換体を用いた解析やin situハイブリダイゼーションにより観察した。栄養成長期において、合成酵素遺伝子、シグナル伝達に関与する遺伝子ともに分化直後の若葉や幼根の根端付近などの活発に伸長や分裂が行われている組織や器官で発現していた。生殖成長期においてもGUS活性は伸長節間や花芽で観察された(昨年度本大会)。今回は、花芽形成時の茎頂においてこれらの遺伝子の発現解析を行ったので合わせて報告する。これらの遺伝子は、花芽形成直前の茎頂で発現し、その後、枝梗分化期では枝梗原基で、更に生育が進むと、雄蕊原基、タペート層でも発現することがわかった。以上の結果から、栄養成長から生殖生長への転換期におけるGAの果たす役割について考察したい。本研究の一部は、生研機構基礎推進事業の支援で行われた。