抄録
地上部に白色光を照射したとき、遠赤色光に富む光が植物体内を通って根まで到達する。したがって土壌中の根の光環境は、昼夜で遠赤色光から暗闇へと変化すると考えられる。しかし、このような場合の遠赤色光の役割についてはあまり研究が行われておらず、根における遠赤色光誘導遺伝子の報告もほとんどない。そこで、遠赤色光が根の遺伝子発現に与える影響を調べるために、理研シロイヌナズナ完全長cDNAマイクロアレイ(約7000個の完全長cDNAクローンを含む)を用いて、暗順応、及び遠赤色光により誘導される遺伝子の網羅的な解析を行った。16L8Dの日長条件で育成したシロイヌナズナ(Ler)に対して、3日間の暗順応処理を行ったところ、42の遺伝子の転写産物が3倍以上増加した。この中には既知の暗誘導遺伝子(UBQ3)が含まれていた。一方、暗順応した植物にFRを4時間照射した場合には、3倍以上増加した遺伝子はなく、2倍以上増加した遺伝子もわずか17であった。このうちの一部の遺伝子は遠赤色光でわずかに誘導されることがノーザン解析でも確認された。したがって、遠赤色光により根で誘導される遺伝子は少数でその変化率も小さいことが示唆された。現在さらに多数の遺伝子のノーザン解析を進めており、その結果をあわせて報告する。