抄録
ACC合成酵素(ACS)はエチレン生合成経路の律速段階の反応を触媒する酵素で、発現は主に転写段階で制御されている。しかし、我々は翻訳後の制御を予測して解析した結果、トマトの傷害誘導性ACC合成酵素LE-ACS2のC末端がCa2+に依存してリン酸化されることを明らかにした。このリン酸化は酵素活性には影響を与えないが、リン酸化型のLE-ACS2の半減期が長く、非リン酸化型は半減期が短い、即ちタンパク質の代謝回転に関わっていることを明らかにした。
そこで我々は、リン酸化による翻訳後制御機構を解明するために、LE-ACS2をリン酸化するprotein kinaseの同定を試みた。まず傷害処理をしたトマト果実からcDNAライブラリーをλZAPIIファージベクターで作製した。次にLE-ACS2が発現するように形質転換した大腸菌BL21に、このファージーライブラリーを感染させた。IPTGでcDNAとLE-ACS2を共発現させ、LE-ACS2のSer460リン酸化部位を認識する特異抗体を用いて、LE-ACS2をリン酸化するprotein kinaseをスクリーニングした。
その結果、あるCa2+-dependent protein kinase (CDPK)がクローニングされた。このCDPKはエリシターやosmotic stressにより発現が誘導されるタバコのNtCDPK2とよく類似していた。現在、このCDPKの基質特異性などの生化学的性質や、発現様式を解析している。