抄録
酸性土壌での主要なストレス因子はアルミニウムの過剰障害であるが、マンガンや二価鉄の過剰障害、低pHそのものの害も知られている。一方、種子サイズは収量などの生産性に直接関係する形質であるばかりでなく、幼植物の不良環境でのサバイバル能力に関与すると言われる重要な形質であり、ストレス耐性と関連を持つか否か興味が持たれる。これまでに我々は新規Al耐性遺伝子を単離するためにシロイヌナズナを用い、複合形質であるAl耐性に関与するQTL(quantitative trait loci)解析を行ってきた。今回、Alストレスとその他の酸性土壌ストレス下での根伸長量並びに種子サイズの遺伝学的な関連性について調べる目的で比較QTL解析を行った。各形質について、LerとCol系統から作成されたRILs(recombinant inbred lines)の能力を数値化したところ、正規分布を示した。これらの形質値とNASC から入手した分離データを用いて、複合区間マッピング法、及び完全組み合わせ法により複数の単因子QTL及びエピスタシスによって支配されることが明らかとなった。また、各形質間に共通する遺伝子座が推定され、Al耐性とその他のストレス下での根伸長、種子サイズを共通に支配する遺伝要因が存在することが示唆された。また、Al耐性に関与するQTLに関しては準同質系統を作出中であり、マッピングの現状とともに報告する。