抄録
酸性土壌は最も広く分布する不良土壌であり、一般に作物の生産性は低い。この土壌での作物の生産性を向上させるためには、複合的に存在するストレス因子の把握と個々の要因に対する耐性遺伝子の単離が必要である。先に報告したように、シロイヌナズナは酸性土壌ストレスであるAlイオン過剰及び低pHに感受性が高いが、両者の根伸長阻害は蛍光染色により区別することができる。これは、両ストレス因子が生理学的には区別できることを意味している。ここでは、200系統以上のシロイヌナズナアクセッションを、Al及び低PHストレス条件で水耕栽培し、シロイヌナズナ種内の耐性差を調べると共に、両ストレス耐性の相関を比較した。
10倍希釈MGRL水耕液を基本溶液としてAl区(4 Mの塩化Alを含みpH5)若しくは低pH区(pH4.7)で、各系統10個体をナイロンメッシュに播種して1週間栽培した。上位3個体のデータを用いて各ラインの潜在的な耐性能力を比較した。集団内のばらつきの大きさを表すCV値は、対照区に比較してAl区が低pH区より大きいため、Al耐性を支配する遺伝要因がより多様であることが示唆された。両者間の相関は、低く耐性を支配する主要な遺伝要因は異なると考えられた。ところで、低pH区の相対根伸長には系統間で最大50%程度の差が存在することから、この形質を支配する遺伝要因が存在することが予測できる。