抄録
植物の根の伸長を土壌中のAlが阻害することは以前から知られているが、その具体的なメカニズムはまだ解明されていない部分が多い。私たちは主要な穀物であり一般にAl耐性が高いといわれるイネ(トヨハタモチ、sabana6、IR72、IR36)とAl耐性が低いといわれるコムギ(ET8、ES8)を用いて、Alイオンの存在が植物体におよぼす影響を調べた。
まず、Al濃度による障害程度の指標として、根の伸長阻害を測定した。その結果イネ4品種(トヨハタモチ、sabana6、IR36、IR72)とコムギのAl耐性種(ET8)の間ではAl感受性にはほとんど差が見られなかった。次に植物体内のカロース産生量を測定した。その結果、どちらの植物種においても根端から2~7mmの伸長部位においてカロースの蓄積と根の伸長阻害との間に強い関連があることが示された。現在、イネとコムギが根圏のpHをどうコントロールしているかをゲルとpH指示薬を組み合わせて測定している。また、ET8とES8のAl耐性の差の原因とされる有機酸量についてもイネとコムギの双方で測定している。さらに、細胞膜の損傷や過酸化障害の発生の有無についても調べており、それらの結果とあわせて報告する。