日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
会議情報

絶滅危惧水生食虫植物ムジナモ(Aldrovanda vesiculosa L.)の研究
2.生活環における微細構造の観察
*厚沢 季美江新田 浩二高取 晃金子 康子松島 久
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 592

詳細
抄録
ムジナモは、ミジンコなどの水生小動物が捕虫葉表面の感覚毛に触れると迅速に葉を閉じて捕らえ、消化腺毛から分泌した消化酵素で分解し、吸収毛で分解物を吸収する。ムジナモは入手の難しい稀少な植物であり、維持・栽培も困難であったために、その生活環における微細形態の詳細は不明であった。本研究ではin vitroで培養・増殖させたムジナモを野外に出して生活環を回し、茎頂、花、種子形成、種子発芽、冬芽、及び捕虫葉に形成される消化腺毛、感覚毛、吸収毛の微細形態を明らかにすることを目的とした。
直接SEM観察と、通常の化学固定および急速凍結置換法により調製した切片の、光顕とTEMによる観察を行った。ムジナモの茎頂は葉原基に覆われておらず裸出していた。極めて稀に花をつけるが、雄蕊と雌蕊は近接していて自家受粉が行われていた。種子の貯蔵小器官は、胚乳ではアミロプラストとプロテインボディ、胚ではリピドボディとアミロプラストが主であった。ムジナモは根のない水生植物と記されているが、発芽時に根が現れることが観察された。冬芽には発達したアミロプラストが多数存在していた。捕虫葉の消化腺毛ではER、タンニン液胞及びラビリンチン壁の発達が観察された。感覚毛では細胞間連絡とERが特に発達し、吸収毛ではゴルジ体の著しい発達が確認された。さらに、セリウム法を用いて、消化腺毛の発達段階における酸性フォスファターゼの局在をTEMで観察した。
著者関連情報
© 2003 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top