抄録
イネに対して非親和性であるAcidovorax avenae N1141株のべん毛構成タンパク質フラジェリンは、イネ培養細胞に対して過敏感細胞死や抵抗性関連遺伝子の発現などの抵抗性反応を特異的に誘導する。本研究では、イネにおけるフラジェリン認識機構を解明することを目的として、フラジェリンの認識部位に関する解析を行った。はじめに、シロイヌナズナにおいてエリシター活性をもつことが知られているフラジェリンN末端部分の保存された配列より作られたペプチド(flg22)とA. avenaeでflg22部分に相当するペプチドを作成し、イネ培養細胞に処理したところ、共にエリシター活性を示さなかった。次に、様々なドメインごとに分けたフラジェリン断片を作成し、そのエリシター活性について解析を行った。その結果、フラジェリンのC末端部分の断片をイネ培養細胞に処理したときにのみ活性酸素や抵抗性遺伝子の発現が誘導され、イネはシロイヌナズナとは異なる認識システムを有していることが示唆された。そこで、イネに存在するフラジェリン認識物質を明らかにすることを目的として、フラジェリンのイネミクロソーム膜画分に対する結合実験を行った。BS3で架橋化されたタンパク質を抗フラジェリン抗体によって検出した結果、約45kDaのフラジェリン結合タンパク質が確認された。現在、この45kDaタンパク質について解析をすすめている。