抄録
単子葉植物を宿主とする植物病原細菌Acidovorax avenaeのイネ非親和性菌株はイネ培養細胞に過敏感細胞死や抵抗性関連遺伝子の発現等の抵抗性反応を特異的に誘導するのに対し、親和性菌株はこのような抵抗性反応を誘導しない。我々はこれまで、イネによるこの菌の特異的認識と抵抗性反応誘導に、この菌のフラジェリンやType III分泌機構によって輸送されるhrpY、hrpWが分子パターンとして関与していることを明らかにしている。そこで本研究では、イネの抵抗性反応誘導における個々の分子パターンの関与を明らかにするため、非親和性菌株のフラジェリン、hrpY、hrpW、hrc (Type III)のそれぞれの欠損株を作製しcDNAマイクロアレイを用いてこれら認識物質の下流に存在する遺伝子群の解析を行った。それぞれの菌接種0.5、1、2、3、4、5、6時間後のイネ培養細胞からmRNAを精製し、独自に構築したイネcDNAマイクロアレイ(3353クローン)を用いてそれぞれ遺伝子の発現変動を調べた。その結果、非親和性野生株接種によって誘導される遺伝子の中で、フラジェリン欠損株で約8%、hrpY欠損株で約4%、hrpW欠損株で約2%、hrc欠損株で約23%の遺伝子の誘導が消失していることが明らかになった。現在、個々の分子パターン認識シグナルの下流で制御される遺伝子について詳細な解析を行っている。