抄録
植物の本質的な防御機構を解明するため、ニホンナシに感染する病原糸状菌Alternaria alternata Japanese pear pathotypeとシロイヌナズナを用いて研究を行った。A. alternataをシロイヌナズナ葉に接種したところ、胞子は葉上で発芽して付着器を形成し、penetration pegを形成したが、植物細胞内へ侵入することは出来ず、感染は成立しなかった。これに対して、植物は菌の侵入を感知し、速やかにパピラを形成したが、活性酸素の生成や、過敏感細胞死等の過敏感反応を示さなかった。一方、cDNAマイクロアレイを用いてA. alternataの攻撃に対するシロイヌナズナの発現遺伝子の網羅的解析を行った。その結果、128の遺伝子が菌接種により発現誘導され、86遺伝子が発現抑制された。本報告において、これら遺伝子群の防御応答における役割について考察する。