抄録
緑藻クラミドモナスは、環境中のCO2濃度変化を感知して、複数の遺伝子発現を調節する。炭酸脱水酵素遺伝子Cah1の発現調節変異株を用いて、CO2応答の機構を明らかにしようと考えた。Cah1のmRNAは低CO2条件(0.04%)で蓄積し、高CO2条件(5%)では蓄積しない。また、この発現には通常光照射が必要である。さらにCO2応答に関わる発現調節領域を既に見い出している(1)。DNAタギング法によって単離した株I39は、Cah1を含む複数の低CO2誘導性遺伝子の発現が5%のCO2条件で抑制されなかった。しかしCO2濃度を15%まで上げると、これらの遺伝子の発現を抑制できたので、I39株は無機炭素の絶対量を検知する所に問題があった。また本来、発現に光が必要であるCah1遺伝子が、I39株では暗所でもCO2濃度の低下に応答して誘導された。これらのことから、I39株の原因遺伝子はCO2の絶対量の検知に関わるだけでなく、光シグナルの伝達に関わることが示唆された。I39株へのタグの挿入は複数あったが、これらは同一染色体上に存在し、表現型と連鎖していた。1) Kucho et.al. Plant Physiol. (1999) 121: 1329-1337.