抄録
植物ホルモンや浸透圧ストレスなどの刺激を植物が検知し、体内を伝達する際に、His-Aspリン酸リレー系が重要な役割を果たしていることが近年明らかにされつつある。His-Aspリン酸リレー系の構成因子の中で、情報の出力を担うレスポンスレギュレーター(RR)は、2つのタイプ(タイプA及びB)に分類されている。タイプA に属するRRの多くは、その転写がサイトカイニンによって誘導されるが、タイプBにみられるようなDNA結合に関与する領域を有さず、その具体的な機能の詳細は不明である。トウモロコシにおいて、タイプAに属するRRが6種類(ZmRR1,2,4,5,6,7)、タイプBに属するRRが3種類(ZmRR8,9,10)単離され、発現特性が明らかにされている。そこで我々は、タイプAのRRによって媒介される情報伝達系の一端を明らかにするために、ZmRR1と相互作用するタンパク質群を酵母Two-hybridの系を用いて単離・解析した。
単離したタンパク質のうちの一つ(ZmHD1)は、金属イオン依存的なphosphohydrolase活性を担うHDドメインを含む、265 アミノ酸からなる機能未知のタンパク質であった。HDドメインを有するタンパク質は、バクテリア・古細菌・真核生物にわたって広く存在し、核酸代謝やシグナル伝達に関与していることが示されている。現在、ZmRR1 とZmHD1との相互作用の詳細な解析、ZmHD1の生化学的な性状解析を行っており、本発表で報告する予定である。