抄録
タバコ培養細胞BY-2は、植物病原菌由来のタンパク質性エリシター(cryptogein)を認識してプログラム細胞死(PCD)を誘導する。エリシター処理直後に、一過性で二相性の[Ca2+]cyt変化、持続的なCl- efflux、早い一過的な変化と持続的な変化の二相性のpH変化、さらに活性酸素生成が誘導されることが明らかとなり、特徴的なパターンを示すイオンの動員や活性酸素生成がPCDの制御に関与していると考えられた(2002年度本大会)。このイオンチャネルカスケードの因果関係を明らかにするために各種特異的阻害剤を用いた解析を行ったところ、Cl- effluxに伴う膜電位脱分極が[Ca2+]cyt変化に関与すること、陰イオンチャネルを介したCl- effluxの誘導に[Ca2+]cyt変化が必要であることが示唆された。また、エリシター誘導性の活性酸素生成に[Ca2+]cyt変化が必要だが、逆に活性酸素生成を阻害しても[Ca2+]cyt変化に顕著な変化は見られなかった。これらの結果をもとに、PCD誘導過程における細胞膜上での初期応答反応の分子機構について議論する。一方、エリシター誘導性の[Ca2+]cyt変化は、酸素の供給や培地成分などの環境要因によって大きく影響された。これらの環境要因が[Ca2+]cyt変化に影響を与える機構についてもあわせて報告する。